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長いお休み

GWというものはMIDSには存在しない。
モーメントの起動実験中は必ず誰かが常駐し、小さな異常にも対応しなければならないため
各セクションから最低一人、もしくは二人が常時出勤する事になっていた。

ルドガーがレクスと入れ替わるようにして仮眠室から戻ると、一週間ぶりに
――実に7日間も離れていたのだ――
目にする跳ねた黒髪がぴょこぴょこと計器類の間を移動していた。
不動博士。
心の内で名前を呟くだけで胸が熱くなる。

「おはようございます、GWはいかがでしたか、博士」
「ああ、おはようルドガー」
驚かせないようにそっと声をかけると、不動博士は少しばかり振り返っただけで、また計器類の表示を眺める格好に戻ってしまった。
「おかげさまで久々に家族とゆっくりできたよ 君はずっと研究所にいたのかい?」
家族と。
奥様と、生まれて間もない遊星と、家族水入らずで過ごしていたのだろう
遊星が生まれてから博士は研究所を空けることが多くなった
モーメントから一週間も離れるなど、以前の不動博士では考えられない事だ
私はそれが少々不満だったので、思った事を素直に言ってみる事にした。
「ええ、モーメントの稼動分析以上に心惹かれることはありませんからね」
その言葉に不動博士は立ち止まり、虹色に輝くモーメントのひかりを見上げるようなしぐさをした。
「…さみしかったよ、君に会えなくて」
「…博士…」
貴方も、寂しいと思っていてくださったと?
そんな事を言われては抱きしめたくなってしまう。
くるりと振り返った博士は、にこやかに笑って見せた。
「今のはモーメントに言ったんだ」
「そう…ですか」

モーメントは遊星粒子でできている。
自らの子供に同じ名前をつけるほど、大切に思っているモーメントを
博士は時々人格を持つもののように扱う事があった。
それは私も同じだ。
モーメントは、遊星粒子は生きている。
それを知っているのは、モーメントを開発した、貴方と私、だけ…

「ありがとうルドガー、モーメントをずっと見ていてくれて」
「いえ…モーメントは」
私たちの、大切な
「モーメントは、私たちの大切な子供のようなものだからね」
はっとして博士の瞳を覗き込むと、そこにはからかうような色は見当たらず
むしろ真摯なまなざしと言っても良かった。
「君が見ていてくれるなら安心だと、思って、いられた…でなければ一時だって離れたくないよ」
「博士」
胸が熱くなる。
私になら、任せられると、言ってくださるのか。
私たちの、大切な…

衝動を抑えられず、目の前の大切な人を、そっと腕の中に迎えた。
一週間ぶり、170時間ぶりの、不動博士…
ずっと研究所にいれば、いつかひょいと顔を出してくれるかもしれないと思っていた。
モーメントを看ながら、ずっと貴方のことを考えていた。
私は、ここから離れられずに貴方を待った。

「そんなに力を入れると苦しいよ、ルドガー」
「ええ、すみません」
「私に会えなくて、さみしかった?」
「ええ、とても」
「私もだよ」
腕の中でにこりと笑ってみせる不動博士が、愛おしすぎてめまいがする。
博士はおとなしく私の腕に収まったまま、先ほどまで眺めていた計器類を指差した。
「こことここが気になるんだ、調べてみたいんだけど…手伝ってくれる?」
「ええ、もちろん」

本格的な稼動実験を前に、調整しなければならない事は山ほどあった。
モーメントを見上げると、その虹色の美しいひかりは舞い踊り、飛び跳ねるように回転していく。
人の心を読み取る、粒子…
それは今の私の心を映して、喜びに溢れているように見えた。

GWの終わりにこんな風になればいいなあーと思っていたときの話。
1年ぶりにルドガーと博士のツーショット(解説ブルーノさんありがとう!)で
二人だけが遊星粒子の可能性に気付いていたみたいなお話が出てきて
弾け飛びすぎてもうどうしたらいいかわからない!