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廃墟の街、命あるもの

俺たちの住むサテライトは、とうに廃棄された街だ。
ビルは放置され、ガラスは割れ、朽ちてゆくばかりの街では
すべてのものは廃棄物で
どこか壊れたもの
捨てられたもの
そんなものばかりに囲まれて育った。

   * * * * *

「ジャック、そっちの5番のネジを取ってくれ」
「これか」
夏の蒸し暑さが充満する中、
俺たちは上着を放り出し薄手のインナー1枚で過ごしていた。
地下とはいえ、道路の裂け目から注ぐ陽光は眩しさを増すばかりで
作業をしながら汗が滴るようになるのは時間の問題だ。
「ここに差し込めばいいのか」
「ああ」
両手で装甲を押さえている遊星の背後から腕の上を掠めて
小さなネジをネジ穴へと押し込んでゆく。
ひとつずつ捻るたびに、遊星の腕と、俺の腕がかすかに触れ合う。
汗ばむ陽気に耐え
こんな息の詰まるような地下で密着しながら
俺たちは、作り出そうとしていた。
新しいものを。
完全なものを。

「…ジャック」
先に音を上げたのは遊星の方だった。
何度も触れ合う腕に、どうにも居心地が悪かったのは確かで
その、他人の肌に触れるという滅多に無いできごとが
めぐりめぐって心拍数を増大させていた。
暑さのせいだけではないと、お互い気付いていただろうか?
「仕方がないだろう、こうしないとネジが――」
汗が噴き出すのを自覚しながら
自分の下になっている遊星を見た。
遊星は、仰向いて俺を見ていた。
額から顎へと伝った汗が
その薄く開いた唇へ滴り落ち
俺の汗を 遊星の舌が舐め取るのを
この目で見たかどうか

「………っ………ん………」
からん、かん、からんと、ネジどもが跳ねる音がする
気がつけば、俺は遊星のくちびるを自分のそれで塞いでいた。
「……っふ……」
かすかに、塩分の味がする。
俺の汗か。
そう思った時には
汗で張り付いたインナーに指先を滑らせていた。
遊星のからだが、かすかに震える。
生きているもの、だ。
この壊れかけた廃墟の街で
ただひとつの全きもの

指先が手のひらになり、胸を合わせ、背中に腕を回しあって
ひび割れたコンクリートに体を横たえながら
俺たちはくちびるを離すことができずに
探りあい、押しつけあい、身を震わせては
互いの体液を混ぜ合わせることに熱中していた。

…ひとのからだがこんなにも、心地良いものだったなんて。
知ってしまった。
知らないほうが良かったか?
どちらにせよ、もう、戻れないような気がした。

   * * * * *

壊れかけた無機物ばかりの街では
生きているもの、それ自体が貴重で―――
あたたかなもの
命を宿すもの
それは
互いのからだ だけだった。

6話のジャックが、思ったよりだだっこwだったので
もし年が同じくらいだったら、思春期はこんな感じもいいなというサテライト妄想。
13か14くらいかなー。お、おたがいはじめて人に触れた感じで…。